この恋が罪だとしても
「濡れネズミの出来上がりー!!」
「キャハハッ」
教室に、笑い声が湧き上がる。
それを聞いているのに、私の心は動かない。
「くしゅんっ」
あぁ、慣れているとはいえ……やっぱり、寒いものは寒いな。
感じても、その程度の感覚だけで、それを辛いとか悲しいとは感じられなくなっていた。
お弁当を手に、濡れて張り付いた髪を搔き上げると、無言でその場を離れる。
「無反応でつまんなーい!」
「あいつ、人形みたいだよなー」
そんな、クラスメートの声が、背中越しに聞こえた。
私が、人形みたい……か。
あながち、間違いじゃないかもしれない。
だって、嬉しいとか、辛いとか、悲しいって気持ちは……。
あの日、大好きな人の大切な人の記憶を奪ってしまった瞬間から、全て消えてしまったから。