この恋が罪だとしても
「アイツは……後悔してる……のか?」
雪乃の記憶を奪ってしまったことを……。
だから、俺達を助けようとしてくれてる?
その方がしっくりきて、ズキズキと胸が痛んだ。
「この傘……どうすっかな……」
アイツ、朝に音楽室でピアノ弾いてたよな……。
そこで返せば……って……。
「捨てても良いだろ、こんなの……」
アイツだって捨てていいって言ってたし、なによりアイツに借りを作りたくない。
なのにまた……アイツ、あんな顔すんのかな……。
傷付いたような、戸惑った顔が、また頭の中に浮かぶ。
「っ……イラつく……」
あんな傷つかれた顔されると、モヤモヤすんだろ。
チラつくアイツの顔に、イライラしてきた。
半ば強引だった気もするけど、借りといて恩を仇で返すほど、嫌なヤツにはなりたくねぇし……。
やっぱり、アイツに会いに行こう。
渋々そう決めて、俺は雨の中アイツの傘と一緒に家へと歩き出した。