君は君のままでいて
君がいた

春。
今年の開花ははやかった。
4月の入学式には桜は散ってしまい、葉桜とも言いがたい葉ばかりの樹木が校門に向かって並んでいた。
校門では教師らしき大人がふたり立っていて、校内へ入って行く生徒たちに挨拶をしている。
生徒は皆同じ格好をしている。
私服の学校じゃないから当たり前なんだけど……
上から下まで皆同じ。
公立なのに鞄、靴、靴下まで指定なんて……入る高校を間違えたかもしれない。

1年5組。
教室に入ると知った顔を見つけた。
「おっはよー紳(シン)ちゃん。」
「…孝行(タカユキ)」
「何だよー。朝からオレに会ったのが不満なわけ?」
「お前に関わるとろくな事がないからな」
「今回は良い事あったろー?オレのおかげで桜ちゃんに会・え・たんじゃん?」
さくら…ちゃん?
「勝手な名前つけんな。」
< 1 / 2 >

この作品をシェア

pagetop