まだ見ぬ春も、君のとなりで笑っていたい
「やっと二学期終わるね。長かったー」

昼休みの始まり、自販機に向かいながら四人で歩いているとき、香奈が嬉しそうに言った。

「ほんとそれ。明日は終業式だけだし、あとは午後の授業二時間受けたら、もう冬休みみたいなもんだよね」

菜々美が同意すると、香奈が「だよねー」と頷いてから、「いいこと思いついた」と顔を輝かせた。

「ねえねえ、今日さ、放課後マックでも行かない? 冬休み前祝い!」

菜々美は「冬休みのお祝いって」とおかしそうに笑いながらも、「いいね」と答える。

「遥と遠子は予定どう?」

香奈に訊ねられて、遠子はこくりと頷いた。

「うん、行く」

すると菜々美が意外そうに目を丸くする。

「いいの? 彼方くんは? いつも帰り一生懸命じゃん」

遠子はぽっと顔を赤らめて「別にいつもじゃないよ」と恥ずかしそうに答えた。

「今日は美術部休みなんだけど、陸上部はやるみたいだから、どっちにしろ時間合わないし」

その答えに、香奈がにやにやと笑いながら、

「ふーん、彼氏がだめなら友達ってか。いいねーラブラブカップルは」

と嫌みを言ってみせる。遠子は「からかわないでよ」と情けない顔をした。

「それに、私別に香奈たちより彼方くん優先してるつもりないよ……。もしそう見えるなら、ごめん」

素直に謝られて、彼方は困ったように顔をしかめた。

「あたしだってそんなつもりで言ったわけじゃないよ。まあでもラブラブなのは羨ましいけどね。あーいいな、あたしも彼氏欲しー! 高校生らしいきらきらした恋したーい!」

突然の叫びに、遠子と菜々美が笑った。

それを見て、わたしも笑わなきゃ、と思ったけれど、うまく頬が動かない。

そんなわたしをちらりと見て、香奈か「遥は行けそう?」と首を傾げた。

< 144 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop