まだ見ぬ春も、君のとなりで笑っていたい
6 君とわたしを照らす光


「おはよう。迷わなかった?」

待ち合わせ場所にした駅の改札口。

時間ぴったりにわたしの前に現れた天音に訊ねると、彼は微笑んでこくりと頷いた。

その後ろに翔希くんが立っているのを見つけて、わたしはほっと息をつく。

よかった。もしも気が変わって来てくれなかったらどうしよう、と心配していたのだ。

昨日、天音の家で彼の過去のことを聞かせてもらい、翔希くんにチケットを渡してから、今日の約束をした。

天音と翔希くんとわたしの三人で、絵画コンクールの展覧会を観に行く。

わたしの提案に、天音はかなり驚いていた。でも、わたしのことを信じてくれたのか、何も言わずに受け入れてくれたのだ。

わたしの読みが間違っていなければ、きっとこのことで、少しでも事態がいいほうに傾いてくれる。どうかそうなりますように、と祈るような気持ちで、わたしは二人と一緒に展覧会の会場へと向かった。

「あっ、遥! こっちこっち」

会場の入り口に遠子が立っていた。笑顔でこちらに手を振っている。

「おはよ、遠子。急に呼び出したのに、来てくれてありがとね」

「ううん、いいの。どうせ私も来るつもりだったから」

遥が見に来てくれて嬉しい、と笑ってから、遠子がちらりと天音を見た。それから翔希くんにも目を向ける。

「あの……こんにちは」

遠子が明らかに緊張した様子で二人に頭を下げた。彼女は昔からとても人見知りなのだ。初対面の人と話すときは、いつも肩が縮まっている。

「初めまして、望月遠子といいます。色葉高校の一年生で、美術部に入ってます」

かちかちに固まったまま名乗った遠子に柔らかく笑いかけてから、天音はノートを取り出し、前もって書いておいたらしいページを見せた。たぶん自己紹介が書いてあるのだろう。

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