まだ見ぬ春も、君のとなりで笑っていたい
わたしにとっては将来の夢や目標というのはとてつもなく遠くて、そうそう簡単に見つかるものではないし、もしかしたら一生見つからないかもしれないと思えるくらいだ。

でも、この学校では、わたしのように行きたい大学も学部も全く決まっていない生徒なんてかなりの少数派なのだ。おかしいのはわたしのほうなんだ、と机の上の傷を見つめながら心の中でため息をつく。

「まだ決まらないのか」

先生が呆れたように言って、きつく眉根を寄せた。すみません、とわたしはもう一度つぶやく。

「どうするんだ、もう一年も終わりだぞ? 高校二年生は受験生ゼロ学年なんだ。二年生になったら受験に向けて本格的に勉強を始めないと、三年になってからじゃ遅いんだぞ。一年のうちにしっかり進路を決めて、目標を見据えて計画的にやっていかないとなあ……」

先生の言葉が、右耳から左耳へと素通りしていく気がする。

だって、この話はもう十回以上は聞いている。担任の先生から聞かされたり、学年集会の講話で聞かされたり、授業担当の先生から聞かされたり。耳にたこができる、ということわざが思い浮かんだ。

どうやら、志望大学も希望の学部も、なりたい職業さえ決まっていないわたしは、この学年ではかなりの少数派らしい。だから、こうやって何度も呼び出されて個別に面談されてしまうのだ。

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