まだ見ぬ春も、君のとなりで笑っていたい
どうしてみんな、何年も先の未来のことをちゃんと思い描けるのだろう。わたしには、一年先の自分のことさえ、なにをしているのか、どうなっているのか、全く思い浮かべることすらのに。

自分が大学で専門的なことを学んでいる姿も、会社で働いてお金を稼いでいる姿も、少しも想像することができない。わたしは本当に社会人になれるんだろうか。どんな仕事ならわたしにもできるんだろうか。

もう何度目かも分からない問いかけを自分にしているうちに、先生はやっと言葉の勢いを弱めた。

「まあ、まだ将来のことが具体的に考えられないっていう気持ちも分からんでもない」

その言葉に、わたしは思わず目をあげた。だからすぐに結論は出さなくてもいい、と言ってもらえるかと思ったのだ。

でも、先生の顔つきは相変わらず険しかった。

「分からんでもないが、もう高校生なんだから、いつまでも甘えたことは言ってられないだろう。そうやって結論を先延ばししているうちに、いつの間にか三年生になって、目標がないから勉強に身も入らなくて、どんどん周りから遅れをとって、あっという間に受験当日になって、結局どこの大学にも受からない、そういうやつを先生はたくさん見てきたんだ」

聞きながらわたしはまたうつむいて、はい、と小さく相づちを打った。

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