まだ見ぬ春も、君のとなりで笑っていたい


あかりさんの店を出てから、天音と明日の約束をして、手を振って別れた。

そして時間を確かめようとスマホを取り出した瞬間、高揚していた気分に冷水をかけられたような気がした。

画面を埋め尽くす、お母さんからの着信履歴。未読メッセージの件数は二十を超えている。

お母さんの激しい怒りが伝わってきて、心臓が暴れ出した。どうしようどうしよう、と内心で呟いたけれど、もうどうしようもない。とにかく家に帰るしかない。

重い身体を引きずるようにして家の前までたどり着き、玄関のドアに鍵を差し込むと、いきなりがちゃりとドアが開いた。

「遥っ!!」

耳をつんざくような甲高い声と、怒りで真っ赤になったお母さんの顔。

次の瞬間、頬に衝撃が走った。それから、火がついたようにかっと熱くなる。お母さんに平手打ちされたのだ。

小さい頃は、言うことを聞かなかったときや習い事の練習をさぼったときにたまに叩かれていたけれど、最近は全くなかった。だから、一瞬何が起こったか分からなくて、手で頬を押さえたまま呆然とお母さんを見つめ返した。

「今何時だか分かってるの!? こんな遅くまで連絡もしないで、どこほっつき歩いてたの!!」

お母さんの怒鳴り声を聞いているうちに、徐々に怒りの感情が湧き上がってきた。

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