まだ見ぬ春も、君のとなりで笑っていたい
いつもの席に荷物を置いた天音は、わたしがトレイを持っているのを見て、すぐにこちらへと向かって来る。手伝おうとしてくれているのが分かったので、わたしは「いいよ、大丈夫」と手を振った。
そのとき、また入り口のドアベルが鳴った。三人組の女性客が楽しそうに笑いながら入ってくる。近くの生け花教室に通っている人たちで、よく帰りに店に寄る常連さんだ。
彼女たちはいつもコーヒーと軽食を頼むので、あかりさんは調理で忙しくなる。それが分かっている天音は、こちらへやって来た。
その後も何組かの来店や注文が続いたので、一緒にあかりさんの手伝いをした。わたしが注文をとり、あかりさんが飲み物や料理を作り、天音がそれをテーブルに運ぶ。
天音が話さないことを知っている常連さんたち相手なら、笑顔だけで無言の接客にも不審な顔はしないと分かっているので、彼も手伝うことができるのだ。
来客が落ち着いたところで、あかりさんがわたしたちを手招きした。
「ありがとう、助かったわ。お手伝いはもういいから、席に座ってちょうだい。飲み物用意するわね」
わたしと天音は彼女に頭を下げて、いつものテーブル席に座った。
「今日は寒かったね。でも、よく晴れてて空が綺麗だったよね」
『空気が澄んでるから、空の青が綺麗に見えるよね』
「それとね、休み時間に空見てたら、ソフトクリームみたいな雲があったから、写真撮ったんだ」
そう言ってスマホの画面を見せると、天音は目を丸くしてから、ふふっと笑った。
『僕もこの前、象みたいな形の雲を見つけた。写真撮れば良かったな。遥に見せたかった』
「じゃあ、今度見つけたら撮ってきてね。あ、そういえば、こないだ見かけた三毛猫が今日もいたよ。相変わらず目つき悪かった」
天音がおかしそうにくすくす笑う。その顔を見られるのが嬉しくて、面白い話題を探す癖がついてしまった。
そのとき、また入り口のドアベルが鳴った。三人組の女性客が楽しそうに笑いながら入ってくる。近くの生け花教室に通っている人たちで、よく帰りに店に寄る常連さんだ。
彼女たちはいつもコーヒーと軽食を頼むので、あかりさんは調理で忙しくなる。それが分かっている天音は、こちらへやって来た。
その後も何組かの来店や注文が続いたので、一緒にあかりさんの手伝いをした。わたしが注文をとり、あかりさんが飲み物や料理を作り、天音がそれをテーブルに運ぶ。
天音が話さないことを知っている常連さんたち相手なら、笑顔だけで無言の接客にも不審な顔はしないと分かっているので、彼も手伝うことができるのだ。
来客が落ち着いたところで、あかりさんがわたしたちを手招きした。
「ありがとう、助かったわ。お手伝いはもういいから、席に座ってちょうだい。飲み物用意するわね」
わたしと天音は彼女に頭を下げて、いつものテーブル席に座った。
「今日は寒かったね。でも、よく晴れてて空が綺麗だったよね」
『空気が澄んでるから、空の青が綺麗に見えるよね』
「それとね、休み時間に空見てたら、ソフトクリームみたいな雲があったから、写真撮ったんだ」
そう言ってスマホの画面を見せると、天音は目を丸くしてから、ふふっと笑った。
『僕もこの前、象みたいな形の雲を見つけた。写真撮れば良かったな。遥に見せたかった』
「じゃあ、今度見つけたら撮ってきてね。あ、そういえば、こないだ見かけた三毛猫が今日もいたよ。相変わらず目つき悪かった」
天音がおかしそうにくすくす笑う。その顔を見られるのが嬉しくて、面白い話題を探す癖がついてしまった。