過去ポスト
太陽はどんどん沈んでいき、海が真っ暗な闇へと変わっていく。


あたしの周りも闇に包まれ、どこからが陸でどこからが海なのか、境界線がわからなくなっていく。


あたしはそっと波打ち際に近づいた。


あの時も、あたしはたしかこの辺に立っていたんだっけ。


そして夏の後ろ姿を見送ったんだ。


前日には『雨がふったあとだからやめた方がいいよ』と止めたのに、あの時あたしは夏を引き止める事はしなかった。


どうしてだろう?


どうしてあたしは夏を止めなかったんだろう。


気が付けば涙が頬を流れていた。


誰もいない真っ暗な海へと手を伸ばす。


「夏……いかないで……」


あたしは海の中に夏の面影を探してそう呟いた。


足首まで海に浸かっているのに、不思議と冷たさは感じられなかった。
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