過去ポスト
☆☆☆

「サユ、ここで待ってろよ」


気が付けば、あたしは砂浜にいた。


照りつける夏の太陽に目を細めながら目の前に立つ人を見る。


「……夏?」


名前を呼ぶと、その人は少し首を傾げてあたしを見た。


「どうしたサユ? 調子が悪いのか?」


夏があたしに近づき、顔を覗き込んできた。


「夏……!」


ハッと我に返ったあたしは夏に抱き着いていた。


ウェットスーツに身を包んだ夏は少しよろめきながらも、あたしを抱き留めてくれた。


そこから伝わって来る確かな体温。


「サユ?」


不思議そうな声が上から聞こえて来る。


「ずっと、ずっと会いたかったんだよ!」


「はぁ? 昨日も会っただろ。一緒に夏休みの課題をした」


そう言われ、あたしは顔を上げて夏を見た。


夏は怪訝そうな表情であたしを見つめていた。
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