過去ポスト
確かに夏の言う通りだった。


夏が亡くなる前日、あたしたちは友達を誘って課題の追い込みをしていたんだ。


きっとここは一年前の夏の海。


「ねぇ夏。海には行かないで」


あたしは夏の体をきつく抱きしめてそう言った。


「なんだよ、まだ波の事を気にしてんのか?」


「昨日はすごい雨だったもん。きっと危険だよ」


「サーファーはこのくらいの波の方が丁度いいんだよ。見て見ろよ、他にも沢山いるだろ?」


夏の言う通り、海には沢山のサーファーたちの姿があった。


「だけどダメだよ。行かせない」


絶対に、ここで譲るわけにはいかなかった。


もう一度この場所に立てたんだから、今度こそ夏を引き止める。


「サユ、知ってるか?」


そう言われて、あたしは首をかしげて夏を見上げた。


「人の気持ちってのはなぁ、毎日、いや、瞬間的に変化していくものなんだよ」
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