過去ポスト
それは夏の口癖だった。


あたしも嫌ってくらい聞いて来た言葉だった。


「例えばさ、夕飯に牛丼が食べたいなぁと思ってたのに、いざ店に入ると、やっぱりウナギがいいなぁとか。そういう事ってあるだろ?」


あたしは頷く。


わかってる。


わかってるよ、夏。


「でもな。中にはずっと変わらない気持ちってのもある」


その言葉にあたしは小さく息を吸い込んだ。


夏の……友太さんからの手紙に書いてあった言葉を思い出す。


『ずっとずっと好きだ。』


「そういう、変わらない気持ちを持てるってことは、とても幸せな事だと思うんだ」


「うん……」


頷いたけれど、その声は涙によってつっかえてしまった。


「今から俺はその気持ちをお前に伝えたいと思ってる」


「それなら……! それなら、今ここで言って? わざわざ海になんて出る必要ない!」
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