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恭平は一方的に切られた電話を握り締め、道の真ん中で立ち尽くしていた。

妻、有香(ゆうか)が高熱で倒れ、夏波と行くはずだった京都旅行をドタキャンし、スーパーに買い出しに来た帰り道だった。



家事の一切を妻に任せっ放しで何ひとつロクに出来ない恭平は出来上がった惣菜、娘の好物のプリン、カットフルーツを買い、店を出て直ぐ夏波からメールの返事が届いていないことを思い出した。


こんなことで泣くような女ではない。



恭平は誰よりも夏波を理解していると自負していた。


だからこそ
彼女も妻子ある自分をリスク承知で求めているのだと――。


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