今、君に伝えたい
「だから、お願いです。」





震える手を抑えるように、セーラー服の裾をつまんだ。







手汗でマイクが滑ってしまいそうだ。





「前と、同じように私に接してください。」





私の声が、体育館に響いたのがわかった。





「私は記憶はなくしたけれど、その分みんなと たくさん思い出を作っていきたいと思っています。」





失ったものは取り戻せない。





でも、新たに作ることはできる。





「みなさん、おさわがせして すいませんでした。」





スイッチを切り、深く深くお辞儀をした。





ぱん、ぱんという拍手が聞こえたと思うと





やがてそれが大きな大喝采へとなった。





私は頭を上げて、光景を見渡した。





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