学園の通り魔
昼休み。
俺の前の席に、飯畑郷平というやつがいる。
俺がぼっちで飯を食っていたところに、空気も読まず声をかけてきた。
「緒方、飯一緒に食おうぜ」
「え…っと、飯畑…きょうへい?だっけ。なんで?」
「きょうへい、じゃなくて、ごうへい、な」
弁当の具を口に詰め込んだまま熱弁する、面倒なやつだ。
「わかったよ。んじゃ郷平、とりあえず黙ってくんね?」
正直、今は一人がいい。むしゃくしゃする。誰かと話していると、八つ当たりしてしまいそうだ。
なのに、もう一人、空気を読まないやつがやって来た。
「緒方、ちょっといい?」
学級会長だ。
俺が座っていて、学級会長が立っているから、というだけでなく、何とも言えない気迫を感じる。
この人はこれまで、みんなに頼られたり、その期待にうまく応えれたりしてきたのだろう。今俺が感じている気迫は、多分それが自信に成り変わったものだ。
「何ですか?会長さん」
わざと大きくため息をついて見せたが、竜崎硝子は動じることなく、むしろ落ち着いた笑いを見せた。
「そんな堅苦しい呼び方しなくても。私、学級会長として話をしに来たわけじゃないんだけど」
「じゃ、なんて呼べば?硝子とか?」
竜崎硝子がまた笑った。…一体何が可笑しかったんだ。
俺が呆れた目で学級会長を見ていると、もう弁当を平らげてしまった郷平が俺に教えてくれた。
「お前、知らねーの?」
「え、何?」
「竜崎硝子、略してリューショー。
カッコいいだろ。
ほら、この人何でもできちゃうし、スポーツ万能だし、おまけにイケメンでしょ。だからみんな、尊敬の念を込めてそう呼ぶわけよ。
ね、リューショーくん」
なぜか得意げに話す郷平だが、竜崎硝子はむしろ不機嫌そうにため息をついた。
「カッコよくないし、尊敬してもないでしょ、あんたら。そう呼ぶのだって、このクラスのアホな男子だけ」
「なっ、尊敬はしてるよ」
郷平がむきになって言い返した。
こいつ、案外いいキャラしてるかも知れない。俺は心の中でこっそり笑った。
だってさ、突っ込むの、そこなんだ。自分がアホ呼ばわりされているっていう点に関しては、ノーコメですか。
もしかすると、自分がアホ呼ばわりされているっていうことにも気付けないレベルのアホなのかも知れない。
「尊敬してても、リューショーって呼ぶな。緒方、あんたもだぞ、硝子でいいから」
「え?ああ…」
「さて…じゃあちょっと、来てくれる?」
俺が素直についてくると決めつけたような堂々とした歩き方で、硝子はドアへ向かっていく。
どうやら、人前では話しにくい内容らしい。自然と背筋が伸びた。
廊下に出て、その突き当たりまで、硝子は無言で歩いた。速度が段々上がっていく。
その歩き方はまるで、駆け出しそうになるのを我慢するかのようだった。
突き当たりにある階段を、硝子は一段飛ばしで駆け上がった。
屋上まで来ると、硝子は扉を開き、俺の方を一度見下ろした。そして、さらに先へと歩く。
俺の前の席に、飯畑郷平というやつがいる。
俺がぼっちで飯を食っていたところに、空気も読まず声をかけてきた。
「緒方、飯一緒に食おうぜ」
「え…っと、飯畑…きょうへい?だっけ。なんで?」
「きょうへい、じゃなくて、ごうへい、な」
弁当の具を口に詰め込んだまま熱弁する、面倒なやつだ。
「わかったよ。んじゃ郷平、とりあえず黙ってくんね?」
正直、今は一人がいい。むしゃくしゃする。誰かと話していると、八つ当たりしてしまいそうだ。
なのに、もう一人、空気を読まないやつがやって来た。
「緒方、ちょっといい?」
学級会長だ。
俺が座っていて、学級会長が立っているから、というだけでなく、何とも言えない気迫を感じる。
この人はこれまで、みんなに頼られたり、その期待にうまく応えれたりしてきたのだろう。今俺が感じている気迫は、多分それが自信に成り変わったものだ。
「何ですか?会長さん」
わざと大きくため息をついて見せたが、竜崎硝子は動じることなく、むしろ落ち着いた笑いを見せた。
「そんな堅苦しい呼び方しなくても。私、学級会長として話をしに来たわけじゃないんだけど」
「じゃ、なんて呼べば?硝子とか?」
竜崎硝子がまた笑った。…一体何が可笑しかったんだ。
俺が呆れた目で学級会長を見ていると、もう弁当を平らげてしまった郷平が俺に教えてくれた。
「お前、知らねーの?」
「え、何?」
「竜崎硝子、略してリューショー。
カッコいいだろ。
ほら、この人何でもできちゃうし、スポーツ万能だし、おまけにイケメンでしょ。だからみんな、尊敬の念を込めてそう呼ぶわけよ。
ね、リューショーくん」
なぜか得意げに話す郷平だが、竜崎硝子はむしろ不機嫌そうにため息をついた。
「カッコよくないし、尊敬してもないでしょ、あんたら。そう呼ぶのだって、このクラスのアホな男子だけ」
「なっ、尊敬はしてるよ」
郷平がむきになって言い返した。
こいつ、案外いいキャラしてるかも知れない。俺は心の中でこっそり笑った。
だってさ、突っ込むの、そこなんだ。自分がアホ呼ばわりされているっていう点に関しては、ノーコメですか。
もしかすると、自分がアホ呼ばわりされているっていうことにも気付けないレベルのアホなのかも知れない。
「尊敬してても、リューショーって呼ぶな。緒方、あんたもだぞ、硝子でいいから」
「え?ああ…」
「さて…じゃあちょっと、来てくれる?」
俺が素直についてくると決めつけたような堂々とした歩き方で、硝子はドアへ向かっていく。
どうやら、人前では話しにくい内容らしい。自然と背筋が伸びた。
廊下に出て、その突き当たりまで、硝子は無言で歩いた。速度が段々上がっていく。
その歩き方はまるで、駆け出しそうになるのを我慢するかのようだった。
突き当たりにある階段を、硝子は一段飛ばしで駆け上がった。
屋上まで来ると、硝子は扉を開き、俺の方を一度見下ろした。そして、さらに先へと歩く。