学園の通り魔
 また事件が起きた。

 ねーちゃんが倒れた。

 原因は栄養失調だとされた。
 勉強やバイトに、学校にも毎日行ったことで疲労がたまった身体に、回復力はまるで残ってなかったのだ。

 ねーちゃんは拒食症と、不眠症にもかかっていた。

 毎日忙しく頭や身体を使うことで、母さんと父さんのことを考えずに済むと思ったらしいが、逆効果だった。

 俺はそれから不安で堪らなくなった。

 ねーちゃんがいつか、遠く離れた場所に行ってしまう気がして。実際周囲を不安にさせるぐらい、ねーちゃんは不安定だった。

 そしてとうとう、許してしまったんだ。

 深夜、病院から電話があって目を覚ました俺は、告げられた言葉をすぐには飲み込めなかった。

 ねーちゃんは、車が向かってくる道路に、飛び出していった。危険だと知りながら、死ぬことを承知の上で。

 そして、ねーちゃんの思惑通り、車はその身体をはね飛ばしたが、幸いなことに、一命はとりとめた。

 未遂に終わった例の件だが、ねーちゃんの前では「自殺」「母さん」「父さん」「通り魔」は勿論のこと、それらを連想させる様な言葉も禁句になった。

 それで俺は、家族であるはずのねーちゃんと過ごす日々、言葉を選んだり、顔色を伺ったりで神経すり減らされた。

 それから俺は、中学校に朝一番に着いたり、居残りの口実にと勉強に励んだりした。

 そんな日々が、1年と半年続いた。

 しかし、そんなの日々にも、終わりは訪れる。どんな夜にも朝がやって来る様に。
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