豹変カレシのあまあまな暴走が止まりませんっ!
鍋がぐつぐつと音を立て始めた。
玲は台所へと向かいサッと手を洗ったあと、塩を振り入れ、パスタを投入。
この集中しているときの横顔も好きだ。私へうるさいことを言わない貴重な時間。

生まれ変わるなら調理器具か裁縫道具がいい。きっと玲が大切にしてくれるから。

玲は、茹でたパスタをフライパンに移しササッと炒めたあと。

「ほら。リクエストの品だ」

テーブルに座って準備万端な私へ運んできてくれたのは、彩り豊かなペペロンチーノ。


玲の作る料理は几帳面な性格が良く出ていて、具材が細かく厚さが均等、機械みたいな切り方をする。
味付けは、一体何を混ぜたんだろうって思うくらい、繊細で複雑。
それでいて手際が良いのだから、なんだか悔しい。

今日の味付けはスパイシーで、男の料理って感じがした。
きっと玲のことだから、香辛料とかいろいろ混ぜてこだわってるんだろうな。

「美味しい!」
「今日はカロリーの低いペペロンチーノにした」

さり気ない嫌味。気付かなかったことにしよう。

「そうだ、今度の土曜日ね、出かけるけど、夕食までには帰るから」
「そうか。どこへ行くんだ」
「あのね、原宿にね、日本初上陸の――」

私はピタッと言葉を止めた。
スイーツショップに行くなんて言ったら、嫌な顔をされるに決まっている。
『また太りに行くのか』そう言って眉間に皺を寄せる玲が、脳裏をよぎった。

躊躇い沈黙した私に向かって「どうした?」怪訝な顔の玲。
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