豹変カレシのあまあまな暴走が止まりませんっ!
「あの、それはどういう……」

「一緒に行く相手のことを考えて、背伸びしたんだろう?」

背伸び――確かに、丈の短いスカートも、少々派手さが気になるピンク色も、肩が出てちょっぴり寒いニットも、自分から着ようなんて思わない代物だ。
現に、玲の前では一度も着たことがない。

戸惑う私に、玲が抑揚のない声で言った。

「よほど大切なやつなんだな」

「へ?」

「今日会いに行く、女の、先輩とやらだ」

玲が伏せ目がちに言った。『女の』の部分だけ妙にアクセント強めに。

「そいつは幸せものだな」

そう吐き捨てると、今度こそ玲はマンションの階段を上がって行ってしまった。


なんだその言い方。
まるで、自分が不幸みたいに。

ひょっとして、玲は私にいつもこういう服を着ていて欲しいのだろうか?
自分で言うのもなんだが、あんまり似合ってるとは思えないんだけどな。

確かに、玲と一緒に出掛ける時、ろくにおしゃれなんてしていない。
ましてや、木嶋さんと出掛けるときは目一杯おしゃれするくせに、まがいなりにも恋人である玲の前では、おしゃれしないなんて。

ちょっと扱い、悪すぎたかな……?

もしかして、玲は気づいてるのだろうか。
今日一緒に出掛ける相手が女の先輩なんかじゃなく、男だってことに……

まさかね。

玲の絵になり過ぎる後ろ姿を思い出しながら、なんともいたたまれない気分になってしまった。
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