豹変カレシのあまあまな暴走が止まりませんっ!




「おはよう。うわぁ、可愛い服装だね」

さすがは営業さん。時間厳守。
十分前に待ち合わせ場所に着いた私よりも早く木嶋さんは来ていて、今日の私の恰好を見るなり褒め倒した。

「驚いた。会社じゃそんな服見ないから」

「すみません……馬子にも衣裳って感じで」

「そんなことないよ、可愛いよ。すっごく」

木嶋さんは営業をしているせいか、口が上手くてどこまでが本音なのか分からない。
でも、ここまで言ってくれるってことは、とりあえずダメな訳ではないんだろう。私はちょっと安心した。


そういう木嶋さんこそ、普段のスーツから比べると新鮮だ。
ジーンズにシャツというありきたりな組み合わせだけれど、アイテム一つ一つのデザインが凝っていて、品質の良いものを選んでるんだなってことが良く分かる。
かと言ってブランドブランドしてなくて、嫌味っぽくない。好感度大だ。
そして、私と似たぽちゃ体型も上手く隠れている。お見事。

「木嶋さんこそ、私服のセンス良いですよね」

「いやー、悩んじゃったよ。水城ちゃんの隣を歩くから」

「私もすごく悩みました。木嶋さんに恥ずかしい思いさせちゃいけないなって」

「あはは。水城ちゃんは何着てても可愛いよ」

うわー。嬉しい台詞。
玲だったら絶対そんなこと言ってくれないよ。

付き合うんだったら、木嶋さんみたいに、私を甘やかしてくれる人がいいよねー。
――私、気が抜けてぶくぶく太っていきそうだけど。
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