豹変カレシのあまあまな暴走が止まりませんっ!
確かに、私たちは釣り合わなすぎる。

そもそも、ずっと一緒に居たこと自体、おかしかったんだ。

ここはもう、長野の片田舎とは違う。東京の、ど真ん中だ。
昔は対等だった私たちの関係も、今では違う。
世界で一番恰好良い後ろ姿の幼馴染みは、もう私だけのものではなく、みんなにとって価値のある存在なんだ。

これ以上私が隣に居続けるのは、おかしいよ。


「……そうかもしれません」

ぼんやりと考えながら呟いた。
私の言葉を聞いた木嶋さんが、なんだか、眉を悲しそうに歪める。

「……別れたくないんだね」
「え?」
「顔に、そう書いてある」
「いやっ、そんなはずないです!」

私は慌てて両手で頬を覆った。
未練なんて全くないよ。そもそも付き合ってないも同じなんだから。

木嶋さんが、難しい顔をする。
いつものほんわかした彼とは結びつかない、真剣な表情。
私を心配してくれているのだろうか。


「じゃあさ、今日は彼氏もいないことだし、思いっきり美味しい物でも食べて帰ろうよ」
「え、あ、でも……」

私はちらりと左手首の時計に目を落とす。
もうすぐ四時。そろそろ帰らないと、夕飯の支度ができなくなってしまう。

躊躇する私に、いつものにこにこ笑顔に戻った木嶋さんが言った。

「ここから十五分くらい歩いたところに、スイーツバイキングのお店が出来たんだ。雑誌にも取り上げられてて評判なんだよ」

木嶋さんが携帯に入っていた画像を見せてくれた。
美味しそうなスイーツが所狭しと並んでいる画像だ。じゅるりとよだれが垂れそうになった。
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