豹変カレシのあまあまな暴走が止まりませんっ!
玄関のドアを閉めて、靴を適当に脱ぎ捨てて、その辺にバッグを放り投げて、この堅苦しいおしゃれ着から身体を解放させた。
部屋着に着替えて、ベッドの上にごろりと横たわる。

今、隣の部屋に、玲とあの女性が一緒にいる。
何してるんだろう。
……考えるまでもないか。
この時間に男の人が女の人を部屋に連れ込んでやることって言ったら、ひとつしかないよね。
あーあ。彼女のはずの私だって、まだしてもらったことないのに。


毛布を頭からかぶって縮こまる。
気分の悪い妄想ばかりが頭に広がる。


変な音とか、声とか、聞こえてきちゃったりするのかな。
壁、そんなに厚くないし、響いてきそう。
やだ。そんなの、絶対聞きたくない。


私はのそのそと毛布ごと身体を引きずって、ベッドから手を伸ばせばギリギリ届く位置にある棚に手を伸ばす。
確かこの辺に、ヘッドフォンと音楽プレイヤーが置いてあったはずだ。

何も聞こえないように、耳を塞いじゃえばいい。
あの女の人が帰るまで、何の音も耳にいれなきゃいいんだ。

もうちょっと、もうちょっとと手を伸ばして、やっとこさ手が届いたとき。

勢い余って、私の身体がベッドから転がり落ちた。


ドシー――――ン


鈍い地響き。まぁ、この体重が勢いよく落ちてきたんだから、床が抜けなかっただけでも奇跡かも。

「痛ったぁぁぁぁぁ……」

顔面から見事に落っこちて、右頬を押さえながら呻く。


どうしてこんなに私ってドジなんだろう。
だから玲に馬鹿にされるんだ。

玲の悪態が頭をよぎって、どうしようもなく苦しくなった。
今こそ突っ込んで欲しいときなのに。こんなときに限って隣にいないなんて。玲の意地悪。
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