豹変カレシのあまあまな暴走が止まりませんっ!
「ち、違うよ、自分で転んで――」

「俺の比奈に手を上げるとは! あの男、許さない! 殺してやる!」

怒髪天を衝く。本当に人を殺しかねない迫力で、玲は力強く吐き捨てた。

ええええぇっぇぇ!?
なんで!? なんでそうなっちゃうの!?

「れ、玲? 落ち着いて?」
「あの男の連絡先はどれだ! 今すぐ呼び出せ! 殴ってやらなきゃ気が済まない!」
「ち、ち、違うってばーっ」

本気で玲が私の携帯を取り上げて電話をかけそうになっているから、私は必死にしがみ付いて阻止した。



「ベッドから転げ落ちた? 馬鹿かお前は」
「すみませんでした……」

一通りの事情――棚の上のヘッドフォンを取るときに横着してベッドから手を伸ばしたら、態勢を崩して転げ落ちた――を説明したら、どうやら納得してくれたらしい。玲が呆れ半分のため息をついた。

「それでこんな目になるまで泣いたのか? お前、本当に馬鹿だな。骨折などしていないだろうな」
「大丈夫だと思うよ。それに、この目は玲のせいじゃん!」
「は? どうして俺なんだ」
「だって、玲がっ……!」


私を彼女だなんて期待させるようなこと言っときながら、結局女を連れ込んで堂々と浮気して、隣の部屋であんなことやこんなことを……
って思ったら、また涙が出てきた。

「う……ひくっ……」
「は? 何故泣くんだ」
「ふぇぇぇぇん……」
「お、おい!?」

玲の慌てふためく姿を、私は初めて見たかもしれない。
そもそも、玲の前で泣くのも初めてだもん。

涙が止まらなくて、ここぞとばかりに泣きじゃくる私を前に、玲は「全く! どうしろっていうんだ!」悔し紛れの悪態をつく。
やがて諦めたようだ、ベッドの淵に座って私が泣き終わるのをただひたすらじっと待った。
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