豹変カレシのあまあまな暴走が止まりませんっ!
「は? 何を言っている?」
「昨日、玲と一緒に居た女性。部屋に連れ込んでたじゃん」
「……あれはただの同僚だ」
「は?」
「仕事の参考にする、ファッションショーのDVDを取りにうちへ寄っただけだ。すぐに帰っただろうが」
「……そうなの?」
「帰る音、聞こえただろ?」


聞こえないよ。何にも耳に入ってこないように、ヘッドフォンしてロックミュージックガンガンに流してたんだから。


「だいたい、お前と付き合うと約束したのに、彼女など居る訳がないだろう。もしかして、忘れたのか? 俺と付き合うと約束したこと」
「いや……覚えてますけども。逆に玲が忘れているのかと思ってたよ」
「心外だな。俺がそんなに軽薄な男に見えるか?」
「だって、付き合ってる実感ゼロだったから。玲、冷たいし。怒ってばっかりだし。私のこと嫌いなのかと」
「は? 馬鹿かお前」
「ちょっと、一体どれだけ馬鹿呼ばわり――」

言い終わらないうちに。

唐突に、視界いっぱいに玲の顔が飛び込んできた。
唇が塞がれる。
塞いだものが、玲の唇だってことを理解するのに、そう時間はかからなかった。
さっきの乱暴なのとは違って、そっと、優しく、びっくりするくらい、丁寧に。

呆然として、近すぎる顔と顔との距離に視点も定まらないまま、私はただただ虚空を眺めていた。

やがてゆっくりと唇を離した玲が、とろんとした声で言った。

「どうして分からない」

「え……?」

「これだけしても、まだ分からない振りをするのか」

「な、何が……?」

「嫌いな女なんか、抱く訳がないだろう馬鹿が」

え。

それって、それって。
もしかして、私のこと、好きって言ってます?
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