豹変カレシのあまあまな暴走が止まりませんっ!
「お前は馬鹿か」

時間通りにやってきた玲から、開口一番に罵声を浴びせられた。

「何故最初に米を炊かない。俺が五十分後に行くと言ったのは、何のためだと思っている」
「仕方ないじゃん、忘れちゃったんだから」
「で、いつ米は炊けるんだ?」
「五十分後」

玲がはぁ、とため息をついた。

「……風呂に入ってくる」

諦めたようにそう零して、玲は玄関を出て行ってしまった。
時間差で隣の部屋の玄関がバタン! と勢いよく閉まる音。
不機嫌であることが丸わかりの、乱暴な閉め方だった。


なんだよ、そんなに怒らなくたっていいじゃん。
私だってお腹減ってるのにお預けくらって、泣きたいくらいだ。

玲は完璧主義。スケジュール通りに事が運ばないと怒る。
隣にいると疲れるんだよ。ほんと。
私はもっとだらーりだらーりと時間を気にせず日々を過ごしたいのに。

どうして私みたいな、自堕落な女と一緒にいるんだろう。
ひょっとしたら、私の母親が頼んだのだろうか。『比奈をよろしくね』とか。

そんな約束、律儀に守らなくていいのに。
変に義理堅いところがあるからな、玲は。

ベッドの上でゴロンと横になって考えていたら、ふわりふわりと睡魔がやってきて、案の定、眠ってしまった。
夢の中ですら、玲は私を怒鳴っていた。悪夢だ。
本当に私と付き合ってくれるっていうのなら、せめて夢の中でくらい、甘い言葉のひとつ囁いてみてよ。
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