豹変カレシのあまあまな暴走が止まりませんっ!
五十分後。玲に叩き起こされた。
慌てて夕食の支度をして、机の上に今日のメニューを並べる。

いつも玲は、私の用意した食事に対して、何の感想も言わない。
文句がないってことは、気に入ってるってことだよね?
ひょっとしたら私は、玲の胃袋を掴んだってやつなのだろうか。

「ねぇ玲。私のご飯って美味しい?」

褒めて貰えるのを期待してワクワクしながら聞いてみたのだが、玲はムッと顔をしかめた。

「いや。味が濃いからあまり好きじゃない」

イラっとした。

「それならそうと、どうして黙ってたの!?」
「俺は大人だから、出されたものは食べる」

本当に大人だったら、お世辞でも美味しいって言うよ。

「……じゃあ、今度からもう少し薄味にする」
「そうだな。その方がお前の身体にも良い。濃い味の食事は身体が水分を貯め込もうとするから、むくんで余計に太って見えるぞ」

執拗な体重攻撃。
コイツ、よっぽど私の体型が不満なのか。


「ねえ。一個聞いていい?」
「なんだ」
「そんなに私のこと気に食わないなら、どうして恋人になるなんて言い出したの?」

今、私を悩ませている人生最大の謎。
玲は間をおいて悩ましげに首を振った。


「お前の相手をする男が不憫でならないからだ。そんな不幸な男はこの世で俺一人だけでいい」

うわぁ。
聞かなきゃよかった。
いや、もう聞かなかったことにしよう。
うん。それがいい。

私は無言のまま、もくもくとご飯を口に運ぶ。
私と玲の間に、沈黙が降りる。

もう、そのまま黙ってご飯食べててよ。
なんにも喋らなければ、見た目だけやたら綺麗な玲は、目の保養くらいにはなるからさ。
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