先輩と隣の三木くん
 そうこうしているうちに、担任の先生がやってきて、私たちは体育館へと連れていかれた。

三学年が男女に分かれてきっちり並んでいた。先生たちの長い話が始まった。春とは離れてしまった。もう少し話したかった。

「ねぇ・・・・」

「・・・・・」

「あかねちゃんってば」三木くんの声が聞こえた気がした。

三木くんがどこに座っているか確認してみると、彼は斜め前の方に座っていた。こちらを見ていたようだ。

「ん?」私は不思議そうな顔で彼を見た。

「さっきから、呼んでるのに。上の空だったでしょ?」

彼は少し拗ねたように言った。

「ごめん、ちょっと考え事してた。」

「そっか~。特に何もないんだけどね!ただ声かけただけ(笑)」と、にこっと笑ってピースした。

無邪気で子供っぽいな、と思った。でも、案外優しい人だな。

私はそんなことを考えていた。先生の挨拶をBGMにして・・・。

私は、今朝会ったすごく優しい爽やかハーフを探してみた。
彼は、なんとか見える距離の少し離れたところにいた。

一人だけオーラが違うなと感じた。どこか、三木くんに面影が似ているところがある。

三木くんは、黒髪で目が大きく肌がほんのり黒い。きっと、何かスポーツでもしているのだろう。

そういえば、三木くんもかなり整った顔をしている。また、今朝の彼とは違ったタイプの“イケメン”だ。

「ねぇ、あそこの金髪のあの人、すっごいかっこよくない?」

隣のクラスの女の子が友達にそう、話しかけていた。私は心の中で、頷いた。

「あぁ。三木先輩でしょ?この学校で一、二を争うイケメン。学校入る前から噂だったもんね。ほんと、すごいかっこいいよね。先輩狙いでここ受けた人もいるんだって、すごいよね。」

隣の会話を聞き耳たて、聞いていた。
え・・・。あのひと、先輩だったんだ・・・・。え。

「えーーーーーーーーーー」私は驚きを隠せず、つい声を出してしまった。

しまった。みんなが私を見ている。穴があったら入りたい・・・・。

「はい、えっと。そこまでびっくりすることは言ってないけどな(笑)」先生が笑いながら言った。

ほんとに、今日は人生で最大のミスだ。恥ずかしいことがありすぎて、笑いが止まらない。

「あかねちゃん、ほんとしんどい(笑)俺もう、笑い止まらんわ」

三木くんは涙を流しながら言った。

そんなの、嬉しくもなんともない!恥ずかしすぎて、もう、顔も上げらんない。

 やっと、地獄の始業式が終わり、各クラスごとに教室に帰って行った。

帰る途中、私のことを指さしながら、こそこそ話をしていた人が何人もいた。

つらい・・・。辛すぎる。恥ずかしさのあまり、下を向いていたので、誰かぶつかってしまった。

「すいません・・・。」

私は顔を上げることができず、そのまま謝った。

「あ!朝の子!」

聞き覚えのある声が聞こえ顔を上げると、そこには今朝大変失礼なことをしてしまった先輩がいた。

「あ、どうも。」

いろんな気持ちが入り交じってしまった。そっけない挨拶をしたにも関わらず、先輩は私に微笑んだ。

「あの、今朝は本当にごめんなさい。私、先輩だなんて知らなくて、てっきり私と同じと思い込んでしまって・・・。走らせたりしてすいませんでした。」

私は必死に今朝のことを謝った。周りではピンク色の歓声も飛び交っていた。

「あ~全然いいよ。朝から走ったのなんて久しぶりだったし。」

と先輩は微笑みながら言った。とっても優しい人だなと感じた。
私はお辞儀をし、教室へ戻った。

 教室の扉を開けるとクラスのみんなが一斉に私を見た。きっとさっきのせいだろう。

一部の女子はこそこそとわかりやすく私のことをからかっているようだ。

「なにかびっくりするようなことでも聞いたのか?」

笑いを堪えながら後ろでそう言われた。振り向くと、予想通り、三木くんがいた。

「聞きましたとも。それがなにか?」

私はそっけなく返した。自分の席へ着くと隣で三木くんが嬉しそうな顔をしながらこちらを向いていた。

「なに?」私は、我慢できず三木くんに言った。

「いや別に~。面白いやつ見つけたなっと思っただけ。」彼はそういうと顔の向きを変え、前を向いた。

「あかね、なかなか変な子だもんね。」春が三木くんの後ろで呟いた。

「春、それフォローになってないよ~」

「ごめんごめん、つい本音がでちゃった(笑)でも、変わってる子って好きだけどな~。変に合わせてこられるより、自分持ってるやつの方が信頼できるしね。」

そう言われ、私は少し恥ずかしくなって、顔を背けた。

「あかねちゃん、照れてる~」からかうように三木くんは言った。

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