年下彼氏とSweet Life


両親とも相談して、オーストリアにいてもピアノが弾けないなら、日本で治療をして、リハビリをした方が、よいだろうと言うことになった。
途中で、投げ出すようで、本意ではないが仕方がない。

もしかしたら、ピアニストに手が届くかもしれないと、思い始めていたので、ショックだった。
やはりピアニストは、私にとって、夢でしかないのかもしれない。




半月後、帰国した。

まだ思うように歩けないから、車椅子の移動になる。

長い飛行時間は大変だからと、ファーストを取ってくれてあった。親の有り難みを噛み締めた。



日本にもどり、再び入院し、治療とリハビリの計画がたてられた。

次の日、聖が、見舞いに訪れた。

黙って抱き締めてくれて、私は静かに涙した。

聖に会えた嬉しさと、コンサートに出れない悔しさが、ごちゃ混ぜだった。

泣き止むまで、聖はずっと抱いていてくれた。

「やっぱり、ここが私の居場所だね。」

「おかえり。待ってたよ。」

「ただいま。」

「ずっとそばにいるからな。」

5ヶ月振りに会う聖は、ぐんと大人に見えた。

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