年下彼氏とSweet Life
加藤君の高校は、都立なのに、サッカーの強豪だ。
今日の試合相手は、なんとK大付属高校だった。
聖のことが頭をよぎったが、会わないだろうと高を括っていた(くくっていた)。
聖から、サッカーの『サ』の字も聞いたことがないから。
前半は、1対1のタイだった。
休憩に、馨と飲み物を買いに、自販機に行くと、そこに聖がいた。
目が合うと、私は、踵を返して来た道を戻った。
私は、小さな声で、『見ないで、見ないで……』と繰り返す。
引きずる足で歩く姿を、見せたくはなかった。
馨が、聖に気がつき、後を付いてきてくれた。
聖の隣には、聖と腕を組んだ可愛い女の子がいたのだ。
私は、心臓をわしづかみにされているような痛みを味わっていた。
聖とのことに終止符を打ったのは、私なのに、他の女の子といる聖を見て、ショックを受けている。
なんて、自分本位なんだろう。
私は、ピアノだけに生きると決めたはず。
でも、涙は、止まってはくれない。
応援席に戻り、私は、試合を応援することはできなかった。
黙って、馨が、肩を抱いてくれていた。