夜の甘やかな野望~White Night~
1.
さらりとした茶色の髪が風で、ふわっと舞う。
柔らかな雰囲気だが、向けられている背中からは強靭な意思が伺える。
そうじゃないか。
なぜもっと前に気づかなかったんだろう。
彼はそういう男だったのだ。
淡い琥珀色の瞳とか、通った鼻筋とか、甘いくちびるとか。
いやいや、甘い線の、だ。
十分に味わっているだけに、言い方を間違えた。
誰もいないというのに倫子は咳ばらいをしてごまかす。
外見はどちらかというと優柔不断っぽい王子なのだ。
外見、は。
「行っちゃったな」
宗忠の乗る車が白い雪をかぶった、うっそうと茂る木々の向こうに消えた。
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