雨宿りの法則
落ち込んでる時に誰かにそばにいて欲しいなんて、寄り添ってほしいなんて考えを、誰もが思っているというのは間違いだ。
私はどちらかといえばひとりになって気持ちを落ち着かせたいし、このもどかしい思いを他人に話すつもりなんてなかった。
男に弱みを見せて寄りかかるのは、典型的な計算高い女にしか見えない。
そんな女になりたくない。
私がそういう女に見えていたということが許せなくて勝手にイライラしていたら、背もたれから体を起こした敬佑くんが、少し肩をすくめて口元を緩めた。
「響さんは不器用な人だと思ったので。表情では読み取れない感情が、声には出ることが最近分かってきました」
「そんなわけないでしょ」
「自覚ないんだ」
「もー!仕事で疲れてるのに変なこと言わないでよ」
癒してくれとは言わないまでも、楽しい話をして嫌なことは忘れたかったのに。彼がこんなにズケズケものを言う人だとは知らなかった。
今日はいったいどうしたっていうの?
不機嫌オーラを隠すことなく口を尖らせているというのに、彼はニコニコしているばかり。
自分ばかりがイライラしているのが、なんだか滑稽に思えてきた。
やっぱりこんな日に誰かと会うんじゃなかった。
後悔しながら、運ばれてきた食事を口に運んだ。