雨宿りの法則
クリニックから駅まで15分ほど歩き、バスターミナルからバスに乗って40分。バス停から一人暮らしのマンションまでは5分とかからない。
正味1時間の通勤時間に、音楽プレーヤーを起動させてイヤホンをつける。
周りの音を遮断して、オルゴールで奏でられる洋楽を聴く。
一瞬だけ、現実を忘れる瞬間だ。
仕事を終えてマンションへ帰宅すると、テレビをつけてキッチンで夕食を作る。
番組と番組の合間に、短い天気予報が流れた。
華やかさには欠けるが堅実な印象のある地方局の女子アナが、スラスラと明日の天気を告げる。
『明日は夕方から明け方にかけて雨の予報となっています。風も伴いますので、お出かけの際は傘の取り扱いに注意しましょう』
雨か……。
私の中で、ズシンと何かが重くなる。
心のどこかにある、罪悪感みたいなものがのしかかってきて、少しだけ息苦しい。
雨の降る音が好きだったのに。
降り出す前の、泣き出しそうな空が好きだったのに。
季節ごとに匂いの違う雨が好きだったのに。
今は、今は。
少しだけ、苦手。
粉を溶かすだけの簡単に出来るインスタントの甘いミルクティーのカップを両手に包み、同時に唇を噛んだ。