奪いとれっ!!
玄関に行くとすでにタクシーが止まっていた。


獅倉くんが乗り込むと、


「私も一緒に行くね」


タクシーに乗ろうとしたら、遼さんに腕を掴まれた。


「お前はダメだ」


えっ?


どうして?


「獅倉くん一人じゃアパートに着いてからも大変だし。手伝える人がいたほうがいいでしょ?」



「おいっ、大久保!」


遼さんは岩清水家に仕えている使用人を呼んだ。


「はい」


「彼を家まで送ってくれ」


「はい」


大久保さんは事務的な返事を繰り返す。


「遼さん、私も行きたい」

懇願するようにお願いする。


「.....ダメだ」



「どうして?」

遼さんは答えない。



「大久保、行ってくれ」


「はい」


”バタン”


タクシーは獅倉くんと大久保さんを乗せて走り去ってしまった。

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