奪いとれっ!!
部屋には静かな時間が流れていた。

あれだけ高かった太陽が今はすっかり傾いて、赤からオレンジへと変化している。

サッシの影もだいぶ長くなった。



起きたらきっとお腹すいてるよね?

コンビニでおにぎりでも買ってこようかな。

獅倉くんはまだよく眠ってる。



そーっと、立ち上がると靴を履いて、音を立てないようにドアを開ける。

あはっ、泥棒みたい。



「.....瑠理香」


弱々しい声だった。


獅倉くん起きたの?!


「起こしちゃった?」


「.....いや.....」


まだ少し苦しそうだけど、遼さんの家にいた時よりは顔色がいいように思う。



「えへっ、心配で来ちゃった。ごめんなさい」


獅倉くんはゆっくりと体を起こす。


「どうして謝るんだ?」


だって、だって....。


あなたにとって私はただの通りすがりの存在で、彼女じゃなのに勝手に上がり込んで。


あなたにとって私は存在意義がないわけで、迷惑なだけで.....。


ああもう何んて言ったらいいの.....?

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