奪いとれっ!!
「俺、父親いないから」


ぽつり獅倉くんが言う。


えっ?


彼の横顔は少し寂しそうだった。


「.....母親は本妻じゃなくてさ、俺は愛人の子供ってわけ」


遠くを見つめる獅倉くん。


「子供時代は何度も聞いたよ。”どうしてお父さんがいないの?”ってさ」


どんな気持ちで話してくれたのかな。



「母親は、最初は親父を愛してなかったって言うんだ。俺を生んで育てているうちに親父を愛してることに気づいたって....。そんなのおかしくないか?」


.....なんて答えていいのかわからない。


「それでさ、”私は私の運命を受け入れるし、幸せだ”って言うんだぜ」



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