奪いとれっ!!
大通りから住宅街の細い路地に入り、どこをどう歩いたのかな?


人の後をつけるなんてしたことないし、緊張してたせいで歩いてきた景色を全く覚えていない。

帰り道のことなんて頭になくって。


ただ必死に獅倉くんを追うことで精いっぱい。



そこは....
初めてくる場所だった。


古いアパートの前まで来ると、彼は錆びた階段を上り二階の一番奥の部屋へと入って行く。


”バタン”ドアが閉まり、彼が部屋に入るのを見届けた。



「ここが獅倉くんの家?」



結局声を掛けず仕舞いだった。



家に行ってみる?


ううん、ダメ.....。


.....そんな勇気ないよ....。


獅倉くんが出てきてくれればいいのに。

でもそんな気配は全然なくて時間はどんどん過ぎてゆく。

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