もう一度だけでも逢えるなら
 おばあちゃんの形見の古時計の時刻は、六時七分。こんなに早起きをしたのも久しぶり。

 今朝は珍しく、まなちゃんも早起きしている。前足をペロペロ舐めて毛づくろい。

 私はベッドの上でぼーっとしながら、二度寝をしようか考える。

 なぜなのかわからないけど、今朝はあくびが出ない。したくても全く出ない。あくびが出ないと調子が狂ってしまいそう。

 濃い夢だったのに、頭はスッキリしている。体も軽い感じ。

 今日は、二度寝はしないことにした。

 テレビの天気予報は、晴れマーク。今日は昨日より暑くなりそう。

 のんびり会に出席するか、あの人を捜すか。私はぼーっとしながら考える。

「ねえ、まなちゃん。のんびり会に行きたい?」

「にゃあ」

「にゃあじゃわからないよ」

 外は暑いに決まっている。のんびり会に出席して、エアコンの効いた部屋でごろごろしていたほうがいいに決まっている。

 あの人は、何をしている人なのかわからないけど、私みたいな暇人ではないと思う。

 捜したところで見つからないのは目に見えている。

 あの人を捜すんだ! 直接会ってお礼を言いなさい! そうしないと後悔するぞ!

 あんたは黙ってなさい!

 自分に言っても仕方がない。

 もう一度、あの人に会いたい気持ちはある。お礼を言いたい気持ちもある。

 別に今日じゃなくてもいいけど、出来るだけ早いほうがいい。

 私はじっくりと考えて、あの人を捜すことにした。
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