もう一度だけでも逢えるなら
　いつものように街中を歩き回っていた時、急に強烈な眠気に襲われたという。時間は、だいだい八時頃。

　立っていられないほどの強烈な眠気。

　その場に倒れ込んで、道端で眠ってしまったという。

　その時、夢を見た。その夢の中に、かなでちゃんが登場した。

　夢の中の場所は、しずく第二公園。ベンチに座っているかなでちゃんの姿が見えたらしい。



　おはようございます。急なことで驚かれたと思いますが、あなたは久しぶりに眠りに就いて夢を見ています。

　あなたの夢の中にいる方が、後任の方です。名前は、川中かなでさんです。

　しずく第二公園のベンチに座っています。

　お迎えに行ってあげてください。

　よろしくお願い致します。



　声が聞こえたという。優しい感じの女性の声。その声の主はわからない。
　


　水樹は目を覚まし、しずく第二公園に向かった。時間は、だいたい十二時頃。

　夢のとおり、かなでちゃんはベンチに座っていた。



　こんにちは。水樹はかなでちゃんに挨拶をした。

　こんにちは。かなでちゃんは礼儀正しく挨拶を返した。

　水樹は自分が天使であることを、かなでちゃんに伝えた。

　かなでちゃんは状況を理解できず、困惑した。

　水樹は必死に説明した。四年前の春、狭山さんが自分に説明してくれたとおりに。

　それでも、かなでちゃんは信じない。



　水樹と話しているうちに、かなでちゃんは生前の記憶を思い出した。亡くなる寸前の出来事。

　小学校に登校中、子供たちの列に車が突っ込んできた。かなでちゃんも事故に巻き込まれてしまった。

　それ以降の記憶はない。



　かなでちゃんは、不運な事故で亡くなってしまって、天使に生まれ変わったんだよ。

　水樹は必死に説明を続けた。

　かなでちゃんはだんだん理解していった。



　天使になってくれるかな。水樹はかなでちゃんにお願いした。

　はい。かなでちゃんは返事をした。



　優しいお姉さんがいるんだ。水樹は私のことをかなでちゃんに話した。

　そして、水樹はかなでちゃんを連れて私に家に来た。



「かなでちゃんの母親代わりになってくれるかな」
　水樹はそう言うと、私に向かって頭を下げた。

「いいよ」
　私は快く返事をした。
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