もう一度だけでも逢えるなら
 十一時を過ぎた辺りから、しずく第二公園は徐々に賑わいを見せ始めてきた。

 家族連れが多い。

 三人家族。四人家族。五人家族。家族同士で来ている人たちもいる。
 
 どの家族もレジャーシートにお弁当を広げている。

 飲みも物もたくさん置かれている。

 元気な子供たちの明るい声が聞こえてくる。

 早くも上機嫌なお父さん。

 あまり飲み過ぎないでね。お母さんの声が聞こえてきそう。

 昼間から飲むお酒は美味しいだろうな。楽しそうにお花見をしている家族連れの姿を見つめながら私は思う。



 桜の樹だって家族。

 例えるなら、根っこがおじいさんとおばあさん。土の中で太い幹を支えている。

 幹がお父さん。太い枝も細い枝も、数え切れないほどの枝を支えている。

 枝がお母さん。ヤンチャな花びらたちを温かい目で見守っている。

 花びらが子供たち。お母さんの言うことを聞かず、風に乗って、あちこちに飛んでいってしまう。

 お父さんとお母さんは、毎年毎年、春になると子作りをする。

 散っていった子供たちは、また桜の花びらとなって生まれ変わる。



 私の家族は最高の家族。

 かけがえのない大切な家族。

 例えいなくなったとしても。
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