もう一度だけでも逢えるなら
「紗優!」

「おばあちゃん! 久しぶりだね!」

「久しぶり。紗優のことが心配で、逢いに来たのさ」

「そっか。水樹がどこにいるのか知ってる?」

「こちらの世界には、まだ来ていないみたいだよ」

「そっか。いつかまた逢えるよね」

「逢えるともさ。しかし、水樹さんと再会するのは、まだずっと先のことだよ」

「どのくらい先?」

「最低でも、七十年」

「そんなに長生きしたくない。早く水樹に逢いたい」

「紗優の気持ちはわかるよ。けれども、紗優は長生きしなければならないのさ」

「どうして?」

「紗優は、私と同じ人生を辿る宿命だからさ」

「おばあちゃんと同じ人生?」

「そうさ。私は、十七人の天使を見届けた。そのうちの一人がくーちゃんさ。紗優は、私より一人でも多くの天使を見届けるんだよ」

「…………」

「厳しいことだけれども、宿命は変えられないのさ」

「宿命…………十八人でいい?」

「切りのいいところで、二十人にしておやり」

「二十人…………わかった。水樹を含めて、二十人でいい?」

「いいともさ。今は、かなでちゃんのために頑張っておやり」

「うん」

「紗優お姉さん! 頑張れ!」

「くーちゃんも応援しているよ」

「うん。かなでのために頑張る。明日から、会社に行く」

「紗優は、以前より強くなったね。水樹さんのおかげだね」

「うん。ありがとうって、水樹に伝えてくれる?」

「もちろんさ。いつの日か、自分の口で伝えるんだよ」

「うん。必ず伝える」

「いつまでも元気でいるんだよ」

「うん。おばあちゃんとくーちゃんもね」

「それでは、ごきげんよう」

「紗優お姉さん、またね」

「くーちゃん、またね」
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