もう一度だけでも逢えるなら
「紗優お母さん」

「なあに?」

「背中にカナブンが止まってるよ」

「え、うそ、やだ。取って取って」

「取れないよう」

「取ってよー」

「取れないってばあ」

 カブトムシは平気だけど、カナブンは苦手。

「あ、おしっこしてる」

「え、うそ、やだ。買ったばかりのTシャツなのに……もう!」

 私は慌ててTシャツを脱いだ。

 カナブンのおしっこがべっとり付いている。

 ウェットティッシュで擦っても取れない。

 嫌な匂いが染み付いてしまっている。

「紗優お母さん」

「なあに?」

「あのおじさんが見てるよ」

「え、うそ、やだ。見ないで」

 私は上半身裸。

 今日は、水色のブラ。ちなみに、トリンプの天使のブラ。

 ペチャパイだから、なおさら恥ずかしい。

 着替えは持ってこなかった。

 家に取りに戻るのはめんどくさい。

 かなぶんのおしっこ臭いTシャツを着るしかない。

 とても嫌な肌触り。

 気持ち悪くて、背中がぞくそくする。

「いいや! 脱いじゃえ!」

 砂浜で日光浴していると思えばいい。

 水着じゃなくて、ブラだけど。



 いやーん♪ そんなに私を見ないで♪

 嫁入り前の箱娘なのよ♪




 紗優は、相変わらず面白いな。




 水樹……?





 水樹、こんな私だけど、改めてよろしくね!







 おしまい



 もう一度だけでも逢えるならをお読みいただきまして、ありがとうございました。
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