もう一度だけでも逢えるなら
 水樹さんはジーンズのポケットに手を入れて、早歩きで公園から出ていった。

 その後ろ姿からは、哀愁を感じた。

 とても寂しそうな背中だった。真夏だというのに。

 土曜日の午前中に、一人で公園にいたということは、彼女も妻子もいない確立が高い。

 寄り添ってあげたいけど、これ以上、しつこく付きまとったら、ストーカーかと思われてしまうかもしれない。

 水樹さんは、私のことをどう思っているのか……。

「にゃあ」

「ごめんごめん。お弁当を食べようか」

「にゃあ」

 青空の下で、お弁当を食べるのも久しぶり。 

「いただきます」

 甘いはずの玉子焼きが、なんだかしょっぱい。

 ふやけた明太パスタも美味しくない。

 麦茶は温くなっている。

 テンションは一気にだだ下がり。

 こんなことになるなら、のんびり会に出席すればよかった。私は今さらながら後悔した。

 ただ暑いだけ。

 心地よい風は止まってしまった。

 蝉の鳴き声がやかましく聞こえる。

 ついさっきまでは、いつもと違う休日だったのに。

 はあ……これからどうしよう。
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