もう一度だけでも逢えるなら
「裸になりますので、サンオイルを塗ってもらえませんか?」
 私はカットソーをたくし上げた。ブラが見えない程度に。

「こんなところで裸になるんですか?」
 水樹さんは顔を赤らめている。思春期真っ只中の中学生のように。
 
「冗談ですよ」

「冗談でしたか。ちょっと残念です」
 明るい声で言った水樹さんは、にこっと微笑んだ。

 さっきまでの暗い表情はどこへやら。

 にやにやしている水樹さんの視線は、私の胸に向いている。

 いや~ん。そんなに見ないで。私は心の中で喜びの声を上げた。

 私と水樹さんの周りには誰もいないので、本当に脱ごうかと考える。

 淫乱女だと思われたくないので、脱がないことにした。

「にゃあ」
 まなちゃんが私の膝に飛び乗ってきた。

「お腹が空いたの?」

「にゃあ」

 まなちゃんにキャットフードと牛乳を与えて、水樹さんの隣に座り直した。

 水樹さんが何も食べないので、私も何も食べない。

 ただ空を眺めるだけのピクニック。のんびりとしたピクニック。

 真っ白い雲が形を変えながら、ゆっくりと流れていく。

 青空から夕焼け空へ。

 気温は少し下がり、心地よい風が吹き始めてきた。

 水樹さんは明るい表情のまま、空を見上げている。すっかり元気を取り戻した様子。
< 44 / 180 >

この作品をシェア

pagetop