もう一度だけでも逢えるなら
「これから善人になればいいのさ。善人になって、本当に純粋で素直な心を持つ。そうすれば、今よりずっと優しい人間になれるよ」

「うん。善人になれるように頑張る。水樹さんとくーちゃんの他に天使はいるの?」

「天使は各町に一人ずついるのさ。紗優が暮らしている町の天使は水樹さん。詳しいことは、水樹さんにお聞き」

「うん。聞いてみる。水樹さんと付き合ってもいいでしょ?」

「それはいけないよ」

「どうしてなの?」

「実らない恋なんだよ。どんなに好きでも、どんなに愛していてもさ。水樹さんは、そのことをよく知っているんだよ」

「…………」

「他の人を好きにおなり」

「…………」

「まあ、私が決めることじゃないからね。よく考えて決めればいいさ」

「うん。よく考えてみる」

「くーちゃんも、紗優のことを見守っているからね」

「うん。また夢に出てきてくれる?」

「もちろんさ。元気におやり」

「おばあちゃんもね」

「うん。それじゃあ、またね」

「ありがとう、おばあちゃん。くーちゃんも、ありがとう」

「それでは、ごきげんよう」
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