もう一度だけでも逢えるなら
 今度は、ながらスマホをしている人を発見。自転車に乗りながら、スマホを見ている女子高生。見た目はちょっと地味。

 その女子高生は、歩行者とぶつかりそうになっても、ながらスマホをやめない。

 水樹は走って女子高生の後を追いかけている。

 私も走って水樹の後を追いかけた。

「自転車に乗りながらの、ながらスマホは危険ですので、どうかやめてください」
 水樹は走りながら、ながらスマホをしている女子高生にお願いしている。

 女子高生は、ながらスマホをやめた。

 ちゃんと前を向いて運転している。

「成功ですね」

「いやあ、それが、成功したのかはわからないんですよ」

「どうしてですか?」

「あの女子高生は、自分で判断してやめたのかもしれないからです」

「あ、なるほど。そういうことですか」

「でも、嬉しいことは嬉しいですよ。僕のお願いが届いたのかもしれませんからね」
 
 水樹はとっても嬉しそうな顔をしている。

 私もすごく嬉しい。

「活動を続けていて、わかったことがあります」

「何ですか?」

「純粋で素直な心を持った人ほど、お願いが届きやすいということです」

「ということは、私も純粋で素直な心を持っている。ということになるんですか?」

「心の広さは人によって違うと思いますが、紗優さんも、純粋で素直な心を持っていると思いますよ」

 水樹に言われて嬉しかった。

 けれど、私の心はまだまだ狭い。

 広い心を持てるように、水樹から優しさを学ぼうと思う。
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