もう一度だけでも逢えるなら
「私と一緒に暮らしませんか? 音楽が聴けますし、テレビもDVDも好きなだけ見られますよ」

 これは親切の押し売りではないと思う。自分のためでもあるけど、心の底から水樹のことを思ってのこと。住む家もなく、夜通し一人で街中を歩き回っている水樹の姿を思い浮かべると、胸が苦しくなってくる。

「お気持ちは嬉しいですが……」
 水樹は迷っている様子。

 迷っているということは、私と一緒に暮らしたい。という気持ちは少なからずあるはず。

 強引に誘うのではなく、水樹のことを思って心を込めて誘う。

「私のおばあちゃんも、くーちゃんという天使の女の子を家に住まわせていました。なので、私の家で暮らしてください」

「本当にいいんですか?」

「いいに決まってるじゃないですか」

「それでは、紗優さんの家で暮らします」

「やった!」

 私は喜びを爆発させた。

 水樹も嬉しそうな顔をしている。

 生まれて初めての同棲生活。

 幸せの日々の始まり。

 今は何も考えないようにする。水樹との同棲生活を楽しむ。

 そう自分に言い聞かせながら、水樹と一緒に歩いて、私のアパートに向かった。

 手を繋げないのが本当に残念。
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