もう一度だけでも逢えるなら
「外に出たい時は、私に言ってくださいね」

「面倒を掛けて、すみません」

「面倒でも何でもないですよ」

 水樹のためなら何でもする。

 話し相手になったり、リモコンを操作したり、ドアを開けたりすることくらいしかできないけど。

「あまり気を遣わないでくださいね」

「わかりました。普段のように過ごします。あとで一緒に映画を観ませんか?」

「夜回りに行かないといけませんので」

 水樹は本当に真面目な人だと思う。だから、天使に選ばれた。私はそう思う。

「今日くらい、休んだらどうですか?」

「じゃあ、今日は休みます」

 水樹が高校野球を見ている間に、晩ご飯を作った。

 ミートパスタとコンビニの野菜サラダだけのシンプルな晩ご飯。

 普段のように過ごすと言ったので、いつものように、まなちゃんと一緒に食べた。

「質問し忘れていたことがあるんですが」

「何でしょうか」

「猫や犬などの動物も、天使の姿が見えるんですか?」

「見える動物もいますよ」

「そうなんですか」
 
 私は立ち上がり、まなちゃんを抱きかかえた。

「まなちゃんは、水樹の姿が見える?」

「にゃあ」

 まなちゃんの視線は、水樹の方に向いている。

 もしからしたら、まなちゃんも水樹の姿が見えるのかもしれない。
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