もう一度だけでも逢えるなら
 帰りにコンビニに寄って、ポップコーンとコーラを買った。

 家に戻って、水樹と一緒にベルリン天使の詩を鑑賞。

 コーラの蓋を開けて、ポップコーンの袋を開き、DVD再生ON。



 主人公は、背中に羽の生えたおじさん、天使ダミエル。もう一人、カシエルという天使がいる。カシエルもおじさん天使。

 舞台は、タイトルどおり、ドイツのベルリン。

 ベルリンの壁、崩壊前の作品。

 天使ダミエルとカシエルは、人々の心の中の声が聞こえる。

 聞いているだけで、特に何もしない。というより、何もできないといったほうが的確なのか。静かに寄り添い、人々の様子を見守っている。天使は天使だけど、水樹とは違うタイプの天使。

 天使の姿は大人には見えないけど、子供には見える。純粋で素直な心を持っているからだと思う。

 ダミエルは、自分が何のために存在しているのか? 疑問を抱くようになる。

 刑事コロンボでお馴染みの、ピーターフォークが脇役で出演している。本人役、そのままで。映画のロケで、ベルリンを訪れている。

 ピーターフォークは元は天使。天使から人間に生まれ変わった。

 ホットコーヒーを飲みながら、ダミエルに話し掛けるシーンがある。

 ダミエルは、サーカス場で空中ブランコの練習をしている美しい女性、マリオンに恋をする。私と水樹の逆パターン。

 ダミエルは、マリオンと話をするために、人間に生まれ変わろうとする。

 勝利の女神像の上から飛び降りて、ダミエルは人間に生まれ変わった。その時、空から鎧が降ってくる。

 その鎧を売り、ダミエルはお金を手に入れる。

 普通の人のように、コーヒーを楽しみ、真っ白い息を吐き、生きる喜びを肌で感じる。

 そして、サーカス場に行き、マリオンに会って話をする。



 全編モノクロ。

 案の定、難しい映画だった。

 でも、なんだかほっこりした。



「続編があるんですよ」

「そうなんですか」

「今度、一緒に観ましょうか」

「はい。一緒に観ましょう」

 この幸せが、一日でも長く続きますように。

 今はそう願うしかない。

 心の底から願いを込めて。
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