もう一度だけでも逢えるなら
 背中の丸まったおばあさんの歩く速度に合わせて、私もゆっくり歩き、駅前の交番から歩くこと二十分。整形外科病院に着いた。

「お供してくれて、どうもありがとう」

「いえいえ、どう致しまして。リウマチがよくなるといいですね」

「うん」
 背中の丸まったおばあさんは、にっこりと微笑んだ。

 とても可愛らしい笑顔だった。

 その瞬間、私のおばあちゃんの笑顔が思い浮かんだ。

 おばあちゃんが他界して、十二年になるけど、今でもはっきりと覚えている。



 駅に向かって歩いていたとき、あの人の後ろ姿が見えた。

 確かに、あの人。ジャケットの色でわかる。そもそも、こんな暑い中、冬用のジャケットを着ている人は、あの人しかいない。

 走って追いかけたけど、またすぐに見失ってしまった。

 なんとも素早い人だと思う。
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