苦く 甘い香りのふところ

「あん、どうしよ、私たち帰れるのかな」

「弱音吐いちゃダメだよ、こうなったら」

ん?これ、案外いけそう

「たこ、体後ろ向けて」

「え、こう?」

「よしっ」

「え、あん、何してんの」

「これ、案外すぐ抜けるようになってるの。あの人たち、私たちがまさかこんなこと考えるなんて思わなかったんでしょ」

わたしは、手は縛られていたが、手のひらが自由だったので、タコの縄をすぐに外すことができた。

「あん、すごい、取れちゃったよ」

「たこ、わたしのも、取って」

たこは体が自由になり、ピンピンしている。わたしの方は、なぜか、体が言うことを聞かない。

「あん、どうした?」

「なんか、変な薬嗅がされたのか、体が言うこと聞かなくて」

「え、わたし何ともないよ」

「とりあえずあんた、先逃げて」

「馬鹿、そんなことできるわけないじゃん」

「いいから、はやくいって、警察でもなんでも呼んできて」

「わかった、すぐ呼んでくるから、あん、無茶しちゃダメだよ」
< 25 / 55 >

この作品をシェア

pagetop